六 おわりに

 読谷まつりと渡慶次小学校の三線・伝統音楽活動の実践、さらに読谷村と大阪大正区、離れたところでそれぞれの「沖縄」にこだわりを持ち、真の伝統文化教育をめざす教師のそれぞれの活動を見てきた。
 学校教育活動の一部であるクラブ・部活動が社会的にも認められ、大きなうねりとなるためには、地域の人々の理解と協力が不可欠であることがよくわかる。また、学校を離れて、地域の子ども会活動での伝統文化活動があることを渡慶次子ども獅子舞クラブと大阪大正沖縄子ども会の例で知ることができる。どちらも教える側と子どもたち、地域の人々との思いが一致したとき、大きな動きに成長していったということでもある。子どもを介して地域と教える側とが接していくのだから、当然イニシアティブを握るのは教える側のほうである。
 「受け継いだ文化や生活の知恵は、伝える意思がなければ途絶えてしまう。役立ってこそ根付く」と言われる。彼らの頑張った成果は、多くの子どもたち、否、もうすでに大人になった彼ら、彼女たちのなかに息づいていることはまちがいないであろう。
 「アイデンティティー」という言葉がよく使われる。日本語になおすと「主体性」とか、「帰属意識」と訳されている。哲学の分野では、「自分は自分であり真の自分は不変であるとする感覚を意味する」という。
 関西のウチナーンチュに話をうかがっていて、はっとしたことがある。それは、「沖縄で生まれ育ったからウチナーンチュではない。共通の文化を持っているからウチナーンチュなのだ」という趣旨の話を聞いたときだ。
 ウチナーンチュとしての誇りを沖縄の文化をとおして醸成する。その一番の良い機会は、学校教育の中にあるのである。なぜなら、まっさらなこころに深く浸透していったものは、決して消えることがないからだ。文部科学省の指導要領の改訂により、「総合的な学習の時間」のなかで地域のことを学ぶ機会が増えた。今こそ、伝統文化教育を体系化するチャンスである。渡慶次小学校ではすでにその先駆的活動をやってきた実績があることを誇りにしたい。

(写真、新聞記事等の提供 山内昌重)

参考資料

 『受け継ごう 赤犬子の心』 ―渡慶次小学校三味線部・クラブ発表会 記念誌 一九八七年三月発行

 『今、その一歩を…』 山内秀吉琉楽研究会開設一五周年記念公演・記念誌 一九九〇年三月刊

 『―フォトドキュメンタリー―大阪のウチナーンチュ』 (太田順一著) 一九九六年三月刊

 『うたい、はねーかち』 ―読谷小学校三線クラブ発表会パンフレット 二〇〇〇年三月発行

 『まーみなーコンサート二〇〇〇』 記念パンフレット 二〇〇〇年一二月発行

 『イミダス』 (株式会社集英社発行、一九九八年版)